静岡県の実業家・矢部利雄氏が収集したコレクション……織田信長が長篠の戦いの功で奥平信昌に与えた一文字の太刀や、天下三名槍の一つ蜻蛉切(とんぼぎり)をはじめ日本刀、刀装具、絵画、陶芸等が
静岡県の佐野美術館で『ひとの縁は、ものの縁―初公開の矢部コレクション』展として、本日、2月15日(日) まで公開されています。
特に「家康に過ぎたるものが二つあり、からのかしらに本多平八」と謳われた本多忠勝の愛鑓(大笹穂槍・銘:藤原正真作・号:蜻蛉切)は、本多家から離れてからは矢部氏故人の手に渡ったため、実物は今回が初の一般公開になるそうです。
私も一番の目当ては、この蜻蛉切です。
奥の展示室の片隅にあったそれは、よく磨かれて刃は妖しく輝き、精強な三河衆のイメージとは少し外れた美しい珠玉の姿で一段と目と心を惹かれました。
掻かれた樋は、刃を強靭にするとされます(血を通りやすくするという俗説も)。
三鈷剣やその下の不動明王のカンマンの梵字までくっきりと浮かび上がり、そこに生と死の狭間で主の松平家を守護せんという精神が見出せました。
人をあやめる武具であるのに、見ていてどこか晴れやかな気分になるのは、不動明王の降魔三鈷剣は魔と同時に煩悩を断ち切るとされるせいか、または忠勝の人柄でしょうか。
私には美術品の目利きの力はありませんが、戦国の世から泰平の世を築き、そして平和な今の時代まで遺された武人の面影を目に出来て唯々幸せに思いました。
展示は当然穂先のみですが、忠勝が全盛期に携えた鑓は通常より長い凡そ二丈(約6m)、青貝を摺り込んだもので、飛んできた蜻蛉が触れた瞬間、蜻蛉が真っ二つになったことから蜻蛉切と呼ばれるようになったと言われています。
逸話として、実戦で無敵の忠勝が、次男の忠朝(大多喜藩主)の槍稽古の横槍に入ったら負けてしまった話(蜻蛉切を持って参れと言って相手を震わせたというオチ)を家臣が語ったといわれてますが
槍弾正とうたわれた保科正俊にも似たような話があります。槍だけでなく剣豪でもこの手(実戦に強く道場稽古に弱い、転じて道場稽古は実戦に役立たない)の創作は多いですね。
大多喜と忠勝親子、槍弾正の正俊どちらもいずれブログに書く予定で写真ストックばっちり溜めてますよ!
佐野美術館:http://www.sanobi.or.jp
所在地:静岡県三島市中田町1-43
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そしてちょっと寄り道。
三島はもう一つ、林忠崇と遊撃隊関連(こちらも後で記事にします)も目的でしたが…
ちょうどそのスポット上にあるパン屋「グルッペ本町店」で昼食を買いました。
以前書いた「パン祖のパン」の製造元の直営店舗なんですよ。
パン祖のパンのスティックタイプは通常のに比べ固くなく食べやすいお土産向けです。
富士山紙バッグ(¥100)は山型の口がきゅっと締まって、美術館のリーフレットや蜻蛉切ポストカードがしっかり収納できました。シンプルなグッドデザイン。
ちなみにグルッペのご当地グルメパン「みしまコロッケパン」「みしまフルーティキャロット」は三島駅の売店でも購入できます!(2015年2月現在)
Gruppe・石渡食品有限会社:http://gruppe-ishiwata.com/